洋楽クラシックロック雑記帳

懐古趣味の70年代、大体リアルタイムの80年代を中心に思いつくまま。ほぼ備忘録

The Police 「Synchronicity Ⅰ」と「Synchronicity Ⅱ」

2曲とも1983年に発表されたアルバム「Synchronicity」に収められており、私が最初に知ったのは「Ⅱ」の方。




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楽器など様々なもので無機質に混沌と積み上げられた、なにか砦みたいな。
「ギターの砦」にはアンディ・サマーズが、ギターに骨があれば的なものをエアでかき鳴らし、「ドラムの砦」にはスチュワート・コープランドが、こちらは意外にまともなスネアを一心不乱気味に叩いている。
そんな中を渡っているロープにぶらさがり、雄叫びを上げるスティング。
ひとりだけベースも持たずフリー。
ホワイトブロンドの短髪、精悍な顔貌が印象的である。

なんだかそんな3人の勇者が見えざる敵と戦っていきそうな気もしてくるMV。
当時の感覚における近未来的な雰囲気というか。


……ちなみにこのMV、監督はゴドレイ&クレーム。
10ccの曲者チーム(!)だった二人である。



初めてこのビデオを見たのは小6の終わりかけぐらいの時期。
紙とか布とかそういうものでやや嵩高くなっていそうな地面を後ずさりする歌の人(スティング)がクルッとバサっと倒れ込んだままになるところに、なんかお茶目さを感じたりなんかして。

見た目の印象で覚えているのは一番若いと勝手に思っていたアンディの実年齢(84年当時、42歳)をあとで雑誌で知って驚愕したこと。

私の父より年上だなんてウソだろう〜!?的に。
そのとき中1の私からしたら自分の父親でも完全なるおじさんなのに、その上40歳を過ぎた年齢というのはもうかすかに初老に近いイメージだったのだ。


さて曲の方はというと風に乗るようなワクワク感にAメロでの高らかに伸びるボーカル、合いの手のようなつなぎのリフも耳に心地よく残って私はすぐに親しみを感じ、いいな〜と思った。
そして、「シンクロニシティ」というそれまで聞いたことのない不思議な響きの言葉も。

ということで「いつか買いたいシングルレコードリスト」にこの曲を追加した。
が、なかなか買う順番は回らなかった。
なにしろ欲しい曲は増えていく一方、しかしながら懐事情により購入する曲は厳選しなくてはならない。
「今回は見送り」(この枠の曲の方が圧倒的に多いのではあるが)となる日々がしばらく続いたが、いよいよこの曲の番がきた。
それが中1の冬。長いことかかったがやっと買える。

心が定まった清々しさで足どりも軽くレコード屋へ。
ポリスのシングルコーナーにてレコードを一枚一枚引き抜いて確認しながら探す。


(……ない?)


いや、正確には一枚「?」なシングルはあったのだ。
そこにはタイトルが「シンクロニシティ」とだけしか表記されていなかった。

「Ⅱ」の文字がない。
もしかしてビデオでは「Ⅱ」がついていて本当のタイトルは単に「シンクロニシティ」とか?
でもそんなややこしいことする?
違う曲?同じタイトルなのに?

頭の中が「?」だらけでジリジリしてくる──。


そんな状態でジャケットを睨むように見ていると、下の方に小さく「Synchronicity Ⅰ」と英語表記が。


(Ⅰって、1……ワン?なにこれ!?やっぱり違う曲なのかな。でも、カタカナのタイトルではうしろになにも付いてないけど。なんでカタカナのうしろには「Ⅰ」って付いてないんだ?)


私は「Synchronicity I 」という曲の存在を知らなかった。


今思えばあのシングルは、邦題で「シンクロニシティ」だったのかな。
「Ⅰ」だけ省いた形。
初出においては数字を付けずとも1番目であるとわかるからそのままにしたとか。
アルバムのタイトルは「Synchronicity」だからそれと関連させたのかもしれないし。
が、なんにせよ当時の私にはわからないことだらけだったのだ。

まあ、悩むくらいならお店の人に訊けばよいのだが私はかつてクワイエット・ライオットのシングルを買おうとしたときのことをまだ覚えていた。


obachan1971.hatenablog.com


私はガラスのハートの持ち主(自分で言うな)なので、また「ない」とか「知らない」とか言われたら恥ずかしいと思ってあの日以来、店員さんに訊かなくなっていた。

そうして思考が煮詰まった挙げ句、「Ⅰ」も「Ⅱ」も「シンクロニシティ」というタイトルに溶け込んで消えていった。


(こうなれば実際に聴いてみないと。とにかく、買って聴いてみないと……)


──なぜか、勝手に追い込まれていた。


そんなわけでこのシングルをレジへ。


帰宅後、すぐにレコードを取り出しターンテーブルに乗せる。
聴こえてきたのは知らない曲。



*このジャケットはアルバムのもの

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「…………」


その瞬間、催眠から解けたみたいに平常心を取り戻した私。
どうしよう、と普通に落胆しつつ買ってきたばかりのこのシングルレコードを店に返品したい気持ち。
でも別に不具合があったわけでもないし、何よりすでに針を落としてしまっている。

自業自得。
こういうときはやはりご縁がないということだ──。


と、思っていたが。


「Synchronicity Ⅱ 」、なんと日本ではシングルとしてリリースされていなかったのだ!
これはウィキペディアの英語版(日本語翻訳)で「Synchronicity Ⅰ」のことを読んでいて知ったのだが、日本でのシングルは「Every Breath You Take」と「Synchronicity Ⅰ」の2曲のみ。


元からなかったものを欲しがっていたのか。
いやしかし、あたりまえになんでもすぐ調べられる時代になってから初めて知る事柄の多いこと!


さて、こうした経緯で出会った「Synchronicity Ⅰ」。
もう仕方ない。せっかく買ってしまったのだから聴くしかない(言い方!)。
 
が、この曲は私からすると大人であり、難しい印象だったのでいっぺんに好きになることはなかった。
また、洋楽リスナーとして駆け出しであった私の耳は曲のレベルに追いつけず、自分にとっての旨味ある箇所がないかを探すも見出せず。

シングルのジャケット裏には歌詞の和訳も載っていたので読んでみる。

ふむ。こちらも難しい。
日本語だけどよくわからない。
シンクロニシティ」は「同時性」と訳されていた。
それってどういう意味?
日本語なのに理解出来ない(あ”〜)。

もはやあきらめてこの曲をそっとしておけばいいのに私はそれをするのが悔しいのでしない。
とにかく聴く!気に入るまで!(執念!)。

聴き込むうちになんとか馴染んではきたが、やはり「Ⅱ」の方が好みということに変わりはなかった。


数年後。

ようやくアルバム「Synchronicity 」を聴く。
「Synchronicity Ⅱ」を音源で聴くという宿願を果たすのが目的であった。
以下は当時の薄〜い内容の感想。



1990年6月1日(金)

ポリス 感想

このアルバムの目当ては「シンクロニシティ Ⅱ」。
もちろん他の曲もよかったけど、それってなんか意外だったなぁ、もっとヘンな音楽やってるよーなイメージもってたから。
耳にとって健康な音でした。
やみつきになりそーなくせのある……、っていうか、そんなかんじ。



──ヘンな音楽!?
私はポリスのことをどう思っていたのか、もうこのときの私に聞き取りでもしない限りわからない。
ま、それはいいとしてアルバム鑑賞の満足度も安定しているうち、私の中で「Synchronicity Ⅰ」への感想も変わっていった。

数字が次々と出ては消えるフラッシュ暗算のようなイントロ、そこに絡むシンバルワークからの疾走するドラム。
スタイリッシュかつタイトに、なにか教えを説くように理路整然と展開するその流れは高揚感をも伴って最後まで保たれている。

90年に書いた感想にもあったが、まさに「やみつき」になるような味わいがやっとわかってきたみたいな。


そしてタイトルである「シンクロニシティ」とはユングが提唱した概念とのこと。

そこから構築された詞の世界は……やはり解釈が難しい。
自分なりにということでさえも感想が要点を得ない。
この点は相変わらず、追いつけていないままのようだ。


ということで。

最初からお気に入りだった「Synchronicity Ⅱ」、年月を要した「Synchronicity Ⅰ」。
私にとって対照的な両曲だが、今ではどちらも堂々と好きな曲である。