中1(1984年)の冬、私は熱を出して学校を休んだ。
私が体調を悪くしたりするといつも面倒臭そうに対応していた母が、その日は珍しく優しかった。
りんごをすりおろしてくれたり、おかゆを作ってくれたり。
その上、何か要るもの、欲しいものはないかとまで訊いてくれた。
(え、なんでこんなに優しいんだ!?なんか怖い。でも嬉しい。うーん。このかんじだと、ちょっとワガママ言ってもよさそうだな……)
私は調子に乗った。
「ミュージックライフっていう雑誌買って来てほしい。1月号、きれいなやつ選んでな」
熱は大したことなく、午後にはもうましになっていた。
そうして買ってきてもらったMUSIC LIFE(以下ML)をめくりつつ、寝床のそばに置いたラジカセでカセットテープを再生。
直近にエアチェックした、サバイバーの「I Can't Hold Back」──ただ、ラジオでは曲の途中でフェイドアウト(ガッカリパターン)したからフルでは録音出来なかったのだが。
程よく甘いときめき感、ちょうどその時の冬の空気にキリッと冴えるみたいに聴こえたボーカル──。
まんまとハマる、みずみずしく青春を感じさせる系サウンドである。
この曲をテレビの洋楽情報番組で初めて聴いたとき、すぐに心を掴まれた。
あと、タイトルの語感も好きだった。
さて、この曲を繰り返し聴いていい気分に浸りつつ、私はちょっと悩んでいた。
次に買うシングルレコードはこのサバイバーの曲にするか、それともナイト・レンジャーの「クローズ・ユア・アイズ」(原題は「When You Close Your Eyes」)にするか。
最初から最後まではつらつとした甘酸っぱさいっぱい、ツボ押さえまくり!
特にサビは私の頭の中でリフレイン状態で、こうなればもうシングルを買うしかないというサイン。
どちらもいっぺんに欲しかったけど……(万年財政難)。
とにかく、両方とも同じくらい気に入っていた曲。
(とりあえずサバイバーの方は一応、テープに録ったからな〜。だから買うのはナイト・レンジャーにしようか。でも、サバイバーは途中までしか録れてないのがくやしい。きっちり最後まで堪能するためにはやっぱりサバイバーのシングルを買おうか……)
このせめぎ合いは本当に悩ましかった。
しかし、せっかくならこの際どちらかのシングルも雑誌と一緒に買ってきてもらえばよかったのでは?とかなんとか思ったりしながら過去のノートをめくっていたところ、ある書き込みが。
1992年に書いた、これまで買ったシングルの記録。
づらづらと羅列してある中に
ヴァン・ヘイレン「ホット・フォー・ティーチャー」 84年12月20日
とあったのだ(書いたことすら忘れてる自分)。
あれ?
熱を出して学校休んだ日、MLだけでなくヴァン・ヘイレンのシングルまで母に買ってきてもらってたってこと〜!?
この休んだ日というのが12月20日、ちょうどMLの発売日(毎月20日)。
私はMLを楽しみにしていたので発売当日を外すことなく購入していたし、だからこそ母に頼んだのだと。
なので日付けに関しては間違いない、はず。
が、シングル購入周辺のことはなぜかスッポリ抜け落ちていて思い出せない。
まあ、むりやり推測すると母はよく買い物の際、レコード店に寄っていたから、私が買う予定のシングルレコードをついでに買ってきてあげようか?……とかだったのかな?
それか、ちょっと早いクリスマスプレゼントだったとか?
というか、サバイバー、ナイト・レンジャーという前にヴァン・ヘイレンのシングル購入は決定してたんだ(忘れすぎてなんかもう毎度他人事)。
と、いうことで以上の思い出話の中の3曲について、少しだけ付け加えておこうと思う。
まずはサバイバー。
途中までしか録れていないテープを不満に思いつつ、でもどこかでそれで落ち着いてしまってシングルを買うという決断もなかなか出来ないうち、なんとなくそのままに。
ようやくアルバムを手にしたのは6年後。
以下はその当時の文章。
1990年5月31日(木)
サバイバー感想
「アイ キャント ホールド バック」
を1番の目当てとして、これを買った私。
中1のとき、すごく気に入ったのをおぼえている。
なつかしくてよかったけど、それ以上に他の曲もGoodでした。
正にアメリカンロックって音楽で軽くてさわやかという感想。
──時が経ち過ぎ、さすがに「I Can't Hold Back」への感想は薄味ですな。
で、ナイト・レンジャー。
シングルを購入したのはこちら。
決め手となったのは、エアチェックの機会に恵まれなかったということ。
もしナイト・レンジャーの方を録れていたら、結果は逆になっていたと思う。
ちなみに、段々B面の「Why Does Love Have To Change」の方が好きになり、こっちばかり聴いていたような気が……。
最後にヴァン・ヘイレン。
なんと、シングルではギターソロ及びエンディングが短く編集されていてびっくり。
百歩譲ってエンディングは仕方ないとしても、エディのソロを一部とはいえ削るか〜!?
ノリノリで聴いていたのが瞬時に真顔となったのは言うまでもない。
今回出てきた曲、ビデオに関してはまたいつかなんらかの形で改めて書く、かも?