自分の知らない、特に70年代から80年代前半頃の洋楽に興味津々だった高校時代の私。
毎週、宝探しでもするように新聞のFM週間番組表をチェックしていたわけだが、そんなときに見つけたのが
“タクシー・タクシー(10cc)”
(おっ、10cc の知らない曲!なんかこのタイトルも、ちょっとおしゃれっぽい)
番組名は「クロスオーバー・イレブン」。
落ち着いた大人のムード漂うこの番組でかかるということ、それだけでなにかもう、間違いないと思わせた。
当然、エアチェック。
ラジカセにカセットテープをセットし、いつものように録音ボタンと一時停止ボタンを操るのだった(大げさ)。
洗練、知的。
そんなイメージが浮かんでくる。
あと、「I’m Not In Love」でのボーカルしか知らなかったからか、声を張って歌っていることに軽い衝撃を受けた。
それと最初は、丁寧に繰り返されるイントロに若干の忍耐を感じたり、優しく迫り来るような詰め気味の歌にもひるんだりして。
これは馴染むのにちょっと時間がかかるかな?と薄く不安がよぎったものの、まもなくそんな思いは消えていった。
聴けば聴くほどしっくりくる。これは、クセになるパターン!
甘い声は時に切なく艶を帯び、やっぱり発音が心地良い(歌詞が知りたくなる)。
楽しいことが待っているときめき感が全体を支配するも、あくまで慎ましい雰囲気なのがいい。
そしてどこか物悲しいアウトロ。
ここはもう特に好きで、集中して曲を堪能するために目を瞑る。
ギターの音のきらめき、エレピの入り方。
さりげなく自由なドラム。
このかんじ、いいな〜。ずっと続いてほしいぐらい。うっとり……
で、このまま素直にフェイドアウトと思いきや、どっこい、そうは問屋が卸さないのだ!
入れ替わるようにジャングル風の音がフェイドインしてくる。
「ん?」
せっかくの夢うつつ気分がここで覚めてしまう。
余韻にも浸れない戸惑いの中、居てほしい人は去って行き、呼んでない人が来たとでもいうか。
とにかく、私にはこのジャングル音がどうにも取ってつけたように感じられていやだった。
とはいえ、一番10cc っぽさを感じたのもこの部分。
「I’m Not In Love」の、優しい曲調でも歌詞はひねくれというような、それと似たものを感じたからかも。
さて、ではなぜこのような不満ありの感想になったのか。
それは、この曲が収録されたアルバム「Windows In The Jungle」(1983年)を聴いていないから。
アルバム自体は都会のジャングル、大都会の一日といったテーマに基づかれている。
その中で1曲目「24 Hours」とこの曲(曲順はラスト)はリンクしていて(アルバム全体を通すとループしているように感じる)、聴いて初めてそういうことかと納得した始末......。
しかし、そんな曲をハイ、と1曲だけ取り出された状態でしか知らないと、こういう感想にもなるよ?
と、苦しい言い訳などしつつ、ともかくこの曲がお気に入りということに違いはなかった。
そしてこんな垢抜けた曲を聴くようになり、自分のレベルまでも上がったような気がして嬉しがっていたり。
当時、自分の好きな曲を共有(という名の押し付け)ということであれこれカセットテープに詰め込んでは友達に渡したり、という作業に勤しんでいたものだが、その中には「I'm Not In Love」や、もちろんこの曲「Taxi Taxi」もしっかり、入っていたのである。
*おまけ*