洋楽クラシックロック雑記帳

懐古趣味の70年代、大体リアルタイムの80年代を中心に思いつくまま。ほぼ備忘録

私と10cc (1) 「I'm Not In Love」

今、一番好きで聴いている10ccのことから書いていきたいと思う。

この曲との出会いは中学か高校の頃。
茶の間に持ち込んだラジカセでなんとなくラジオを聴いていたとき、たまたま流れてきた。
その地点で、なにか前から知っているような気がして。

(すごくいい曲!)

途中から慌ててカセットテープをセットし、録音ボタンを押した──。



6. 10CC - I'm Not in Love


幻想的で美しい不思議な音楽。
発音までもが心地良い、優しい声。

それなのに、その「僕は恋をしている」ような歌声で、歌っている内容はタイトルからして「僕は恋をしていない」。

う〜ん。

なんかいやだった。
それはないだろう、と。

認めたくない、すごいギャップ。
癒しの笑顔で「大っ嫌い」と言われるようなかんじ?

でもしかし、断片的に聴き取れるほんの少しの意味から、

(まあ、本心では好きなんだろうな、このひねくれ者は)

という解釈で、ふわっと自分を納得させたのであった。


ちなみに。

作詞はこの曲のボーカル、エリック・スチュワート。
彼の奥様の“ある不満”がこの歌詞のアイデアの元となっているらしい。


奥様「エリック、どうしてもっと“愛してる”って言ってくれないの?」

エリック「しょっちゅう言っていたらその言葉に意味が失くなってしまう(軽いものになってしまう)だろ?」

......みたいな。

結局、エリックは自らの信念を貫く。
そして頑ななまでに「愛してる」という言葉なしで、奥様への愛を表現した詞を書き上げる──。


それにしても奥様、実に女性らしい不満でかわいい。
片やエリック、昭和の男!
あと、なんか小難しいな(そこがまた趣き深くもあるが)。


さて、そんなこんなの「 I’m Not In Love」。
エアチェック(ラジオから録音)したこの曲を聴きながら、まるで違う次元にでも上昇したかのようなキラキラとした浮遊感を味わいつつ、やはり悔いが残るのは通しでの録音が出来なかったこと。

「いつか必ず完全録音を成し遂げる──」

ま、そんな誓いを立てたかどうかは別として、以来、こまめに新聞のFM週間番組表をチェックするようになっていた。

そして、ついに時は来た。
70年代AOR特集が組まれたラジオ番組のリストにて、

アイム・ノット・イン・ラブ(10cc)

の文字を見つけたのだ。


絶対にしくじってはならない。

自分にプレッシャーをかけつつ、いつ曲がかかってもいいように臨戦態勢(録音ボタンを押し、テープの動き出しを確認してすぐ、一時停止ボタンを押しておく。
ここか?というタイミングで一時停止を解除。
違ったらまた一時停止、または仕切り直す)を取り続けながらのリスニングは妙に疲れたが、おかげで無事、まるまる1曲をカセットテープに収めることが出来たのである。

以降、とにかくよく聴いた。
どんな人が歌っているのかな?と、ちょっと思ったりしながら。



そんなある日、朗報が。

SONY MUSIC TV」という洋楽番組にて、10ccの「I’m Not In Love」のビデオが流れるというのだ。
この情報を電話でのオンエアプログラム自動音声案内で掴んだとき、私は心の中で小躍りした。


わくわくの当日、録画しつつ視聴。
「MUSIKLADEN」という音楽番組でのライブパフォーマンスらしい。

 



ノーマルな演奏風景はほんの少しで、あとは背景になにやら宇宙な映像処理が施されている。
曲の雰囲気に合わせてのことなのだろうか。
それだけならまだしも、あろうことかメンバーをもいろいろ施しの対象に。

中心で歌うボーカルの人はまあいいとして、その背後に顔だけ浮かび上がるように配置された他の3名がほのかに怖い。
よく言えば子孫を見守る先祖たち、悪く言えば、背後霊!?

ともかく、初めて彼らの姿を拝むことになる私からすればただ一言、

「普通でいいのに」


そんな得手勝手な不満もありながら、10ccの人たち*1への感想はというと......


“ボーカル、キーボードの人”
エリック・スチュワート(vo、gt、key)・・・キーボードを弾きながら歌っていたのかー。それにしてもすごく淡々としていてクールなかんじ。ちょっと気難しそう。

──明確に想像していた人物像こそなかったものの、あまりにも地味でいささか拍子抜けしてしまった。ライトの加減でエリックの顔の、向かって左側が影になりがちなのもあり、それがクールなイメージに拍車をかけたような。

“ピアノの人”
ロル・クレーム(vo、gt、key)・・・なんか目立つ顔。

──私からすると、この中で最も我の強い顔の人がロル。あとになって、ああ、この人がゴドレイ&クレーム「Cry」のプロモーションビデオ(PV)に出てたゴドレイかクレームのどっちかの人か〜(長っ)、と思ったことを覚えている。

“ギターの人”
グレアム・グールドマン(ba、gt、vo)・・・せっかくギターを弾いてるのにキーボードの人たちに押されてかわいそう。

──なぜか、けなげに感じた。ベースの音がしているところも、ギターで当て振りしていたり......。

“キーボードの人”
ケヴィン・ゴドレイ(vo、drs)・・・ヒゲの人。

──ゴドレイ&クレームのどちらかの人、ということさえも思い浮かばず(興味ないの出すぎ)。


.....ということで、身もフタもない感想と言われればそれまでだが、貴重な映像に感激したのもまた事実。
そして、録画したこのビデオを毎日ぐらい視聴するうち、私はあることに気付く。

(ボーカルの人、色っぽいな)

そうして、この人(エリック)は私のお気に入りの人たちの中にふわりと降りてきた。
他の映像とか写真とかも見れたらいいなーと、ほんのり願う高2の冬から春にかけてのこと(多分)であった。

*1:この当時はメンバーの名前及び本来の担当楽器は知らなかった