ラットの音楽すなわち「Ratt’n’Roll」の真髄はミドルテンポにあり──。
「Wanted Man」しか知らないくせにぼんやりとそんなことを思っていたような中1当時の私。
そして「You Think You're Tough」のミュージックビデオ(以下MV)で曲を聴いたとき、そのぼんやりとしたものは確信に変わった(って2曲ともたまたまミドルテンポだっただけ)。
このMVでラットをもっと好きに。
たしか中1が終わった春休みのことだったと思う。
「魔の中2」(そんな言葉ないか)幕開け寸前、自分の中ではなにかいろいろ違ってきていた。
反抗期。中二病。
ともかく、そんなかんじが迫りくる時期にこのMVがガッチリと心に刺さったのだ。
ちょうど「LAメタル」と呼ばれるバンドが勢いを持ってバーッと表舞台に出てきていた頃で、そのタイミングと私のややこしい年齢のタイミングが合致してそのままハードロックに傾倒し出した。
それまでジャンルということを知らず単に「洋楽」というひとくくりで捉えてきたのを、ようやくジャンル別に意識し出したところ。
そして思考は急激に極端になり、ハードロック/ヘヴィメタル至上主義みたいなところにまで行き着くことになるのだが、今考えてみるとそういうコアな期間というのはさほど長くなくてせいぜい数ヶ月間だったのでは、と。
で、MV。
車に備え付けられたテレビのリモコンボタンを押すスティーヴン・パーシー(vo)、手首いっぱいのブレスレット、バングルに80年代テイストの懐かしさを感じる。
さて、映し出されるのは歴代ラットのMV。
そこへ電波障害のように割り込んできたのはネズミを肩に乗せて愛らしい表情(!)を見せるオジー・オズボーン。
ん?まさかの乗っ取り!?
いろいろなミュージシャンが賑やかに友情出演、オジーもその一人なのだがなんかノリノリすぎて最後には着ているTシャツを引き破る謎のサービスぶり!
と、やたら目につくオジーのことはこのくらいにして今度こそ本題。
ドライブ、バックステージ、ライブとそれぞれの中から魅力的な場面を目一杯詰め込んだ目まぐるしくも嬉しい眼福構成。
特にライブパフォーマンス。メンバー皆の動きがめちゃくちゃいい。
そしてシンクロなアクションが当時の私にとってはすごく新鮮でカッコ良すぎてドキドキが止まらないかんじというか。
バックステージでは歯磨き粉(まあ、粉でなくペーストだけど)のようなものをムダにする悪ノリスティーヴン、スタイリング途中の髪が爆発してる弟キャラなウォーレン・デ・マルティーニ(gt)、キラキラゴージャスな衣装もかっこいい、鏡の前で念入りチェックのロビン・クロスビー(gt)、ハンガー掛けの衣装をかき分けて顔を出したときの表情が威勢のいいお兄さん風のフォアン・クルーシェ(ba)、スティックでポーズ、茶目っ気たっぷりボビー・ブロッツァー(drs)。
こういうなかなか見ることの出来ない姿を拝めることも貴重でありがたかった。
ドライブパートではメンバー全員、スティーヴンの車に乗り込んできてキャピキャピ(死語!)。
ともあれすごく楽しそう。
フォアンがソロで歌うところ(さりげなく美声)ではクローズアップ姿か張り切っていてつい、見守ってしまう。
ということでちょっと変わった印象のリフ、それに沿わせるようなリズムが熱を持ったように頭から離れない。
そしてこのリズムこそラットだ!ラットンロールだ〜!と勝手に思い込んでやみつきのようになった。
もうこの状態になったら次に取る行動はただひとつ、シングルレコードを買い求めること。
ところがこのときは少し違っていた。
欲しくなったのはLPレコード、すなわちアルバム。
聴いたことのない曲が大半でその上高価、とてもじゃないが手を出す金銭的余裕などない。
そんな理由でずっとその選択肢はなかった。
ただ心の片隅で、アルバムを聴いてこそ一人前の洋楽ファンという憧れがあったことも事実。
それをだましだまし見ないふりをしていたのも限界にきていた。
……と言いつつ、このほんのちょっと前に実は「アルバム」としてはホワイトスネイク「Slide It In」の方を先に買ってしまっていた。
それも「カセットテープ」で。
しかも、「アメリカン リミックス バージョン」で(……)。
おっといけない、また脱線するとこだった。
このトホホな思い出はまたいつか記事にするとして。
で、まあそんなことでアルバムを買うという願望は一応すでに果たしてはいたものの、気持ち的にすっきり出来ていなかった。
私の中でのアルバムといえばやはりLP盤。
(ついこの前ホワイトスネイクのを買ったばかり。でも……)
結局、自分を制することが出来ず暴走。
短い間に4000円以上も遣ってしまい自己嫌悪に陥いるも、アルバムを手に入れた満足感はそれをはるかに上回っていたので結果、私の行動は間違っていなかった(都合のいい考え方)。
そんなこんなで手に入れたアルバム「RATT」(1983年)。
彼らのメジャーデビュー前に自主制作されたミニアルバムであるが、詳細に関してはこちらで→英語版ウィキペディア(翻訳)
ちょっとだけアルバムの感想を。
お目当ての「You Think You're Tough」を堪能出来る幸せはもちろん、1曲目の「Sweet Cheater」ではラットが速い曲をやっているというだけでまず衝撃を受け、攻撃的な演奏に圧倒される。
「U Got It」はザクザクと粗削りのシンプルすぎるリフが気持ちいい。
「Tell The World」はボーカルとリズムの合体技のようなノリのカッチリとした小気味よさに加えグルーヴをも感じさせる。
「Back For More」はメジャー1stアルバムにも収録されているがアレンジが違い、こちらの方がボーカルありの部分以外(イントロやソロ前など)が内省的なイメージで私はどちらかというとこのバージョンの方が好き。
そして「Walkin’ The Dog」、この曲はエアロスミスのカバー(こちらもカバーらしい。ややこしいな)。
当たり前だが明らかにラットじゃない曲調で当時は微妙な感想だった。
全体としては人馴れしていない野生の獰猛な雰囲気、そこにスティーヴンの歌声がなくてはならないほどぴったりとハマり、楽曲と一体となって聴く側に襲いかかるかんじというか。
そしてやっぱりラットの持ち味はミドルテンポであるという確信をより強くしたのだった。
とにかく、よく聴いたなー。
というわけでウダウダが止まらない。
また次回、書き散らす予定。