洋楽クラシックロック雑記帳

懐古趣味の70年代、大体リアルタイムの80年代を中心に思いつくまま。ほぼ備忘録

Ratt あれこれ(6)

と、いうことで最後はメジャーでの1stアルバム「Out Of The Cellar」(1984年)。

ずっと聴いてみたいと思いつつ後回しになっていたのが、中3になってから友達(熱烈なラットファン!)経由にてやっと聴くことが出来た。

そういえば、ラットの名を一気に世に知らしめた最大のヒット曲「Round And Round」も実際にミュージックビデオ(以下MV)で曲を聴いたのは他のMV曲よりもちょっと遅かった。





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TVでMVを見たときの「バンド名と曲名をノートに書いた」ということ、それがラットに関する最古の記憶で肝心の中身は覚えていないというあるあるパターン。
ラットのファンになって、メンバーのインタビュー記事などでこの曲のMVについての言及を目にするたび、どんな曲なのか、またウォーレンが床を踏み抜いて下へ飛び降りる場面って?と見たい気持ちは募るばかり。


(なんで初めて見たときちゃんと見なかったんだよ〜自分!)


……後悔先に立たず。

とにもかくにもMV視聴の願いも虚しく長い間その機会に恵まれず、半ばその存在は私にとって幻のように。
と同時にこのMVがなんとなく神格化(!?)されていった。

なにか漠然と大掛かりな設定とか想像してワクワクと期待が膨らみ過ぎていたせいか、ついに見ることが出来たときは「…………あ、こんなかんじ…………」と静かにがっかりした感想だったことを覚えている(ほんと勝手な奴だなー)。

あと、このMVには“ミルトン・バール”が出演しているということでそれが特別なことのようだけど誰?と思ってもいた。
今になってネットで調べてみると、ミルトンはアメリカの有名な俳優及びコメディアンで、当時ラットのマネージャーだったマーシャル・バールはミルトンの甥とのこと。

そういう関係からだったのかー。
で、そのミルトン、MVでは華麗なる一族っぽい当主と夫人の二役。
同一人物だったのね。まんまと(?)気付かず。

ちなみに「Back For More」MVの最後、唐突気味に出てくる老ライダーもミルトン。
このMVを見た当時、なんでこの人で締めくくってるんだろう?と薄く謎だったのも今回ついでに解決した次第。



さて。

「Rat」(ドブネズミ)は地下にいるイメージで、アルバムタイトルでもそこから抜け出してくるみたいなかんじだがMVでは屋根裏部屋にいる。
こちらは「クマネズミ」の方の「Rat」かな〜?

そして、ウォーレンがギターと共に飛び込むように天井から降ってくるということが象徴的。
風穴を開けるというか……旧式で保守的、窮屈な空気を一撃で吹き抜けさせるなんともいえない爽快感!

二人のギタリストがソロを分け合う場面では、次のバトンを渡すみたいに頭上を指差すウォーレンの雰囲気、そこからのロビンの獅子の如き堂々たる姿の対比がすごくいい。

それからお気に入りの登場人物がもう一人、それはこの館の執事。
ラット側のスパイとか!?
何にせよ忠実なファンぶり、エンディング近くでのラットのスタジャンを着込んだ、(きっと)本来の姿で曲に合わせてノリノリな様子が実にチャーミングなのだ。


ということでやっと本題に戻る。


まあ早い話が……好きな曲しかないアルバム!



Wanted Man

お尋ね者集団【RATT GANG】がやってくる……!

と、そのままミュージックビデオのイメージが重なるオープニング。
ラットサウンドの醍醐味であるミドルテンポを軸に華やかでメタリック+重厚なリフ、渋みをも兼ね備えたツインギターはまさに耳福。
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You’re In Trouble

イントロからゴリゴリ鳴るベースが新鮮。
そんなベースのリフ主体Aメロから堰を切ったように全パートがなだれ込むサビが印象的。
ソロ前のシンプル&タイトなつなぎを助走に踊り出るベース、パワフルなドラム、更に煽りにかかるボーカルの“Hey Hey!”。
その中でどこか魔術テイスト香るギターソロが魅力。


Round And Round

ポップセンスをも煌めくラットの代表曲。
Bメロのときめき感は高まりをもってサビへと昇華、という胸キュン仕様。
二人のギタリストがそれぞれのストーリーを紡ぎ合わせるようなソロはもちろん、アウトロで弾きまくるギターも!


In Your Direction

ちょっとだけ取って付けたような(オイ)オープニングのあとに続くギターの流れがカッコイイ。
間奏やバッキングのタイム感、空気感。なんかアメリカ〜って感じる(まあ、アメリカのバンドですが)。
ソロパートでは一転、祭り囃子っぽい(!?)シンバルもにぎやかな展開。
その上に乗るギターはあくまでブルージーに浮かび上がり、心のままに気持ちいい。


She Wants Money

いろいろとグングン追い抜いてそのままかっ飛ばして行ってしまうみたいな曲。
連呼されるタイトルに主人公の怨嗟を感じるような、感じないような(なんともはや)。
とにもかくにも細かいこと考えず聴いてスカッとする系!


Lack Of Communication

曲が始まる前の、ギターのネックに指を滑らす、かすかな弦の鳴り、ピックが弦に触れる──聴いている側もスタジオにいるような臨場感伝わるこういうさりげない音、ちょっと得した気分&その直後のギターの音がカッコイイ。
イントロ途中で裏になるリズムがなんとなくギクシャクと感じるのは「意志の疎通不足」というのを表現しているから、とか!?
ボーカルの掛け合い(スティーヴン+フォアン)や合いの手式のコーラスを中心に小気味良い曲調。
ピンポイントながら爽快に突き抜けるソロがいい。


Back For More

メジャーデビュー以前のEP「RATT」(1983年)に収録されている曲の再レコーディング版。
こちらバージョンは原曲の情緒的な要素を少なくしてすっきりとした仕上がり。
跳ねるAメロはグルーヴィーでおしゃれ、適度に湿り気を帯びたサビ、そしてそのふたつの合せ技のようなソロが絶妙。
アウトロでフェイドアウトしていく泣き叫ぶようなギターが沁みる。
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The Morning After

朝焼けに馬が駆け出していくようなイントロ、そしてそのまま走り続けるイメージの曲調。
淡々と哀愁の歌メロ、コーラスは的確。
手堅い構成で安心安定耳馴染み良好。
なにかこういう曲のお手本みたいなかんじもする。


I’m Insane

演奏よりボーカルの印象が強い曲。
読経のような歌が効く──この曲がかかっている間(2分56秒)は宿題やテスト勉強に集中力が沸き、なんかやる気が出た記憶(短時間すぎ)。
なにやらありがたいが邦題は「狂気」!


Scene Of The Crime

この曲にも邦題がついていてタイトルは「殺しの情景」(怖い)。
それはさておき、曲は心地良くゆったりおおらかな流れ、寂寥感を薄くまといつつも聴き味は晴れやか。
構成はきっちり。
式典っぽいイントロ、パレードのようなAメロ。
ラットらしいコーラスのサビ、愁いがじんわりな大サビ。
2回あるソロの1回目は軽やか、2回目は渋い印象、そして最後はイントロ同様の締めくくり。
そのエンディングがフェイドアウトしていくのを聴きながら、なんともいえない爽快さを感じるのである。



──その後、1988年に発表された4枚目のアルバム「Reach For The Sky」でラットから心が離れていく。
音楽性の変化で、私の好きだったラットではなくなったというよくある理由。
以降、自分の音楽嗜好も広くなり、また、いつかの時代のある時期に「LAメタルとかラットとかカッコ悪い」という言葉を聞いたとき、ラットのファンだった過去は自分の中のどこかの押入れの天袋奥に追いやってしまっていた。

何十年も経って今こうやって昔のことを書くうち、そういえばラットも好きなときあったし、サラッと書いておくか〜的なかんじで量も2回くらいで収まる程度という気持ちで軽く書き出してみると止まらなくなっていた。

資料として自分が中学生当時書いていたノートからラットに関する記述を探してみると、大なり小なり感想など結構書いてあったのが我ながら意外だったり。


そんなわけでものすごく長くかかってしまったが、ラットは私にとってハードロック、ヘヴィメタルの世界を覗くきっかけとなったということも含め、中学時代において重要な位置付けのバンドだったのである。