洋楽クラシックロック雑記帳

懐古趣味の70年代、大体リアルタイムの80年代を中心に思いつくまま。ほぼ備忘録

持久走のお供の曲

ある状況での思い出。

中学校に入って最初の試練、それが体育の授業での持久走だった。
これが行われたのは1学期で、その中でどのくらいの期間続いたのか覚えていないが、とにかく毎回あったのだ。
授業のうちの大部分はぐるぐると走っていた。
時間になれば終了とはいえ、私からしたら無間地獄のように感じられた。


(しんどい。横腹痛い。走りたくない。助けて〜。誰か助けてくれ〜!!)


──って、誰が助けてくれるわけでもなし。
そのまま逃亡したい気持ちでいっぱいだったがそうもいかない。
そこで私は現実逃避することにした。
音楽を脳内再生させてこの嫌すぎる時間を乗り切ろう、と。

当時のお気に入りをいろいろ再生させていたと思うが、今でもよく覚えているのはBerlin(ベルリン)「No More Words」(1984年)とHoward Jones(ハワード・ジョーンズ)「Hide And Seek」(1984年)の二曲。




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ベルリンはアメリカのニューウェイヴ系バンド。
ボーカル、テリー・ナンの特徴的なカラーリングのボブヘアーがおしゃれな印象。
ミュージックビデオではその髪型とリンクさせたデザインのクラシカルな服装とも相まり、ノーブル感さえも。
曲自体はラジオで流れてきたときにいい曲〜と思ったのかすでに知っていたのか忘れたが、途中からエアチェックした記憶。

さて、まず序盤は冷静にペースを一定に保てるような曲から流す。
(例:ジェネシス「That’s All 」とか……だったかな?)
ベルリンのこの曲は走り始めてまあまあ消耗してきたくらいのところで選択していたと思う。
ノリもテンポもちょうどよくて少し前のめりに気分が高揚してくるような。
その効果と共に、今していることは楽しいことなんだ!と自分に催眠術をかけることも忘れずに(切実)。
とにかくこの曲は頭の中でリピートする回数が最も多い、いわば主要曲だったのだ。

そして。

「No More Words」でものすごく助けられて、そのまま持久走がフィニッシュすれば一番いい。
ところが大体の場合、なかなかそうは終わらないのでこちらの体力は限界に。
もう、ヘロヘロである。
こうなれば意識が限界の向こう側に到達するまで、一切の雑念を払う必要性が出てくる。
目指すのは「無の境地」。

お次はそこに導いてもらうための曲を脳内再生。
まあ、BGMがあること自体「無」に至る道ではないのかもしれないが。
この場合、音楽ありきのそういう方向ということで(どうでもいいわ)。


登場するのはハワード・ジョーンズ。




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ハワードはイギリス出身のアーティスト。
この頃は一人でシンセサイザーを操り、傍らにはジェド(パントマイムのパフォーマー)というフォーマットで活動していた。
エレクトロポップというのかそんな音楽性で耳に心地よい最先端の電子音(!)、素朴で温かみのあるハワードのルックスという取り合わせがまたよかった。


ちなみにこの曲「Hide And Seek」の邦題は「かくれんぼ」。
アルバムの邦題も同じ「かくれんぼ」。
でもアルバムの本当のタイトルは「Human’s Lib」。
ややこしいよ!


そんなこんなでこの曲により、まるで修行僧にでもなったかのような気持ちに。 
心静かに、粛々と。
不思議にスーッと体の中の熱が引き、涼しく楽に走れたような気がする。


そんなわけで、この持久走という名の苦行をなんとか完遂することが出来た。
その後もマラソン大会など苦手なイベントは数回ほどあったのであるが、その際に何の曲で気を紛らわしたかを覚えていない。
もっとも、持久走ばかりの授業など後にも先にもなかったし、よっぽど嫌だったからこその、脳内再生曲が思い出として残ったのであろう。