洋楽クラシックロック雑記帳

懐古趣味の70年代、大体リアルタイムの80年代を中心に思いつくまま。ほぼ備忘録

初めての音楽雑誌

私が初めて買った音楽雑誌は「MUSIC LIFE 」(ミュージックライフ。以下ML)1984年10月号で中1のとき。
購入理由は当時ファンだったヴァン・ヘイレンの二人(エドワード・ヴァン・ヘイレンとデイヴィッド・リー・ロス)が表紙だったから。

音楽雑誌を読んでみたいという願望は以前からあったものの、一度買ってしまうと毎月欲しくなる。
従ってそんな思いが表面に浮上してこないよう、重しをつけて心の奥底に沈ませていたのだ。
他にも毎月買っていた雑誌があったし、欲しいからといってポンポン買っていたらいくらお小遣いがあっても足りない。

と言いつつ魅力的な表紙の誘惑に負け、この号限り次号は買わないからと自分に言い聞かせ購入。
が、禁断のページ(!?)をめくってみるとそんな自制の重しも外れ。
早い話、こちらがメインとなったのである。


さて、10月号を開いてすぐのページに載っていたのはホワイトスネイクのボーカル、デイヴィッド・カヴァデール。
その年の夏に開催されたロックフェス「スーパーロック’84 イン ジャパン」でのカラーグラビアだった。
それを見た感想はというと……


「厳しそうなおじさん」


……そういうふうに見えた写り方。次のページではカッコよかった。

ホワイトスネイクというバンド自体はミュージックビデオ(以下MV)で見ているはず(ノートに記録していたし)なのにそのMVの内容すら覚えていなかったので、このとき初めてメンバーを見た感覚。

他に印象的だったのはマイケル・シェンカー・グループ(以下MSG)を率いるギタリスト、マイケル・シェンカー。
前髪とサイドを後ろ(というかほぼ頭頂部)でまとめてハーフアップにしたこの人は「神」と書かれていたのだが、その割にはカジュアルな格好してるな〜と(神のドレスコードってか?)。
なぜかそこに若干の違和感を覚えながらも、とにかくこの人は神なんだなと。
で、MSGもホワイトスネイク同様、MV見たのに覚えてない系(そういうの多すぎ)。


と、そんなこんなで読み始めた初心者の私が最初からスッと入っていけたページはというと、やはりカラーやモノクロのグラビア。
おしゃれなヘアスタイルや服装に憧れたり(いろんな事情でマネ出来ない)、アクセサリーを見るのも好きでユニークな付け方(シンディ・ローパーとか)に目を輝かせたり、流行っていたマドンナのラバーブレスレットを買ったり(大量に付けるのがマドンナ流なのに財政の都合で数本しか買えなかったけど)。
そして私の洋楽魂のほとんどを占めていたミーハー精神をくすぐるアーティストのプライベートが伺えるようなコーナー(小ネタみたいなニュースが面白かった)。

それから「ML名物おもしろグラビア」。
これが本当に面白くていつも楽しみにしていた。
毎回、お題に沿って選び抜かれたアーティストの写真の数々に設けられた吹き出しにはいろいろな後付けセリフ。
そこには編集部の旺盛な遊び心と愛ある毒舌(!)をも炸裂していて実に痛快だったのだ。

あと、ML選考委員6名の推薦による「今月のシングルBEST10」の中に自分の好きな曲や購入したシングルが入っているとなにか「よし!」という気持ちで嬉しかったりも。

そして読者が主役のページも充実。
読者=先輩方から洋楽に関する豆知識、よもやま話をじかに聞けるようなコーナーの数々に興味津々!

「He Said She Said 」というギャグコーナーは文字で楽しむミニ大喜利、ミニコントというか。
当初、この場に登場する様々なアーティストのほとんどを知らず、ここで先に知るということも多かったが、改めて正式に(!)知ってくると面白さもじわじわと倍増。
ちなみにコーナー名の中の「said (セッド)」をずっと「サイド」と読んでいたのをあとからこの単語を学校で習って、そう読むのかと驚いた思い出も。
新聞文化面的レイアウトのページには各種投書欄の他、そっくりさんや人生相談まで(親身!)。
ページ最下部(罫下というのかな?)の一言投稿みたいなのもあって、今思えばツイッターみたい。
ここ、人探しや伝言板のように使われていたりすることも。改めて今との差がつくづくと。

反対にインタビュー記事など読み物系は根本的にだいたいのことがわからないので興味を持って読み始めても、なかなかに忍耐を養う時間となるかんじ。
アルバム、コンサートのレビューにおいてもそうだったが、それでも少しずつ音楽に付属する言葉などわかるようになってくると今度はなんでもわかったような気になっていく困った通過儀礼もありながら。

……まあ、今もあまり代わり映えしないのだろうが。

そんなかんじで、洋楽に関してコップ一杯ほどの知識、情報量もなかった私にとってMLとはいきなり目の前に開けた大海だった。
アルバムやビデオ発売の、キャッチコピーにコンパクトな紹介文が添えられた沢山の広告なども含め洋楽の世界の奥深さを誌面から感じとりつつも、フレンドリーでとっつきやすい雰囲気になごまされ、わからないことだらけであってもなんとか読み進めることが出来た。

そして中身だけでなく私は特にMLの見た目もすごく好きだった。
大き過ぎず小さ過ぎず、ちょうど良いサイズ感。ロゴもかわいい。
分厚くて背表紙があって、本棚に収めるとこの背表紙がきれいに並ぶところもお気に入りだった。

それと、忘れてならない付録の存在。
毎号は付いていなかったと思うが特大のポスターなど付いていればルンルン気分にて部屋に貼るのみ!
シールが付録のときは、これをどこかに直接貼ると剥がせないからシート状のマグネットに貼り、それを学習机や缶ペンケースの中にくっつけてたなー。


ということで取り留めもなく書いてしまった。いや、魅力の全てはとても書ききれない。
それほど、「洋楽」という名の幅広い守備範囲はもとより星占いもあれば音楽以外のコラム(映画、本、街のことなど)もあり、トータルで本当に贅沢な毎月の一冊だったと思う。

ただ、実はMLが86年5月号からリニューアルしたとき、私はかなり不満だった。
背表紙がなくなりロゴも変わり、サイズも大きく生まれ変わったのだ(その後もリニューアルはあったが)。
変化は悪いことではないと頭ではわかっていても、ずっと自分が好きだったままでいてほしかったのにと恨めしい気持ちにさえなってしまった。

そういうわがままなヘッポコ読者だったが、それでも私は間違いなく「MUSIC LIFE」でのびのびと育った。
思い出深い音楽雑誌である。