洋楽クラシックロック雑記帳

懐古趣味の70年代、大体リアルタイムの80年代を中心に思いつくまま。ほぼ備忘録

 Yes 「Owner Of A Lonely Heart」/「Our Song」 *1983年の思い出*

「Owner Of A Lonely Heart」(ロンリー・ハート)は、自分のために買った初めての洋楽シングルレコード。

まずミュージックビデオ(MV)の衝撃があった(気持ち悪いカットが結構ある)。
もっとも、当時は精一杯背伸びしたいお子さま故にそんなMVにも興味津々で、食い付くように見ていたのだけど。



*曲のみ

Yes - Owner of a Lonely Heart (HQ)



オープニングの少しくぐもった打音に気を取られた次の瞬間、ギラギラと鳴り渡るギターはどこか邪悪な響き。
続いて展開される音の配置はまさに精鋭、唐突に鳴る効果音(オーケストラヒット)も鮮烈──。


とにかく最先端な音楽と感じられた。
音楽に詳しくなくてもその時代の空気感みたいなものでなんとなくわかるというか。

MVのインパクトも手伝い、一発で私の脳裏にこびりついたこの曲。
印象的なリフ(サビも)が何日もずっと頭の中で再生して止まない。
そしてそれは私がシングルを買うときの決め手でもあった。

そうと決まればレコード店へ直行あるのみ!
お目当てのレコード一枚サッと引き抜きそのままレジへ(この頃は迷いがないな)。

帰宅後、おもむろにレコード店の黒い袋からシングルレコードを取り出し、ジャケットのシンプルなデザインから惹句、その他印刷されてある全部の文字をも含め、それこそ穴が開くほどワクワクと鑑賞。
好きな洋楽の曲を手に入れたという嬉しさに浸り、もったいぶってなかなか曲をかけようとしない自分。

続いて裏面の解説へ(あの〜早く聴いたら?)。

ていねいに文章を追ってみるが、まるでちんぷんかんぷん。
なんのことだかさっぱりわからなかった。
当たり前である。
昨日今日洋楽の世界にやってきた私のような者にわかるはずがない、イエスの歴史。

たとえば、クリス・スクワイアはイエス一筋でやってきた、ということが書かれていたが、その「クリス・スクワイア」が誰だかわからないのだから。
ただ、ものすごく昔からあるバンドなんだという事実と、クリス・スクワイアという人はずっとイエスを辞めずにきた*1頑張り屋さんということだけ辛うじて理解したようなわけで。

己の低いレベルを顧みず解説を読んだバチが当たり(?)、頭が痛くなったところでようやくレコードをターンテーブルに乗せるのであった。


この曲の中で一番好きなところは、ギターソロのあと。

狂気を帯びたギターソロの高揚が止み、間髪入れず哀愁漂うアルペジオへ。
ここが唯一、安らげる。でも膝は抱えてるけど、みたいな。

そしてベースのつなぎからドラムが入ってくる流れ、寂寥感がなんともいえずハードボイルド風。
もはやかっこよさに黙って聴き入るのみである。

で、このあとのサビにてフェイドアウト、と思われた。
が、そこからまた再びの大サビ(で合ってるのかな?)が襲う!
これだけでもドラマティックなのにプラス、転調でさらに盛り上げる!
盛り上げたまま、やっと(!?)フェイドアウトという実に手の込んだ一品というかんじ。

いやはや、ほんといい曲だな〜。
買った自分を褒めてやりたい。


大満足の私はレコードをA面からB面へと裏返す。
曲名は「Our Song」(アワ・ソング)、「アワってなんだろう」と思いつつ。



youtu.be



神聖なる者が天からやってくるみたいなイントロ。
まるで躍るように弾き出される旋律(特にベース!)、リズムが心地よい。
これまた天界から遊びに来ました的独特の高い歌声は、「Owner Of A Lonely Heart」よりこちらの方がすごく合っている気がする。

サビはボーカル含め全部の楽器が煌めいて、そんな中でのベースの役割を聴くのが好き。
そしてエンディングに向かって高鳴る流れは明るい希望しか見えないような軽やかさ。
スッキリとした余韻が残る、実に清々しい一曲。

もちろん、この曲をすぐ大好きになった。
最初から最後まで、聴いていて嬉しくなるほどに。


A面とB面、一枚で二度おいしい。
そんなシングルレコードのひとつである。

*1:途中、解散状態の空白期間は挟んでいる