洋楽クラシックロック雑記帳

懐古趣味の70年代、大体リアルタイムの80年代を中心に思いつくまま。ほぼ備忘録

私と10cc (4) 「10cc Greatest Hits 1972ー1978」

私と10cc 。これまで(1)〜(3)とやってきたわけだが、ここで簡単に時系列を整理したいと思う(TVで「I’m Not In Love」を見た時期は、書いてきた順番とは違うので)。


*体験順

① 「I’m Not In Love」(ラジオ・1回目)86年〜87年頃 中3か高1

② 「I’m Not In Love」(ラジオ・2回目)87年〜88年頃 高1か高2

③ 「Taxi Taxi」(ラジオ)88年 高2

④ 「I’m Not In Love 」(TV)88年〜89年頃 高2

⑤ 「Art For Arts Sake」(ラジオ)89年頃 高2か高3


以上、ゆったりとした流れを経ていよいよ私は10cc のアルバムを聴いてみようかなという気になった。
といっても買うのではなく、借りるのである。
アルバムに関する予備知識もなく、ただ「I’m Not In Love 」が入っているのは絶対借りようという目星があるくらい。
そんなぼんやりとした状態でも、行けばなにかしらいろいろあってなんとかなるだろう、と軽い気持ちでレンタルレコード・CD店へ出向いた。

ところが、CDとLP両方をチェックするも品揃えが寂しい。
ちなみに89年当時、CDは普通に普及していたように思うが、過去に発表された作品のCD化はされていたりいなかったりでまだ充分ではなかった。
だから10cc のアルバムはこの地点でCD化があまり進んでいなかったのかもしれない。
かといって、LPも少ししか置いていなかったのだが。
70年代のバンドだからとたくさんアルバムが出ているような気がしていたので、正直びっくり(勝手なヤツだなー)。

とにもかくにも気を取り直し、チェック再開。

まず、一番印象に残っているのは「びっくり電話」と邦題の付いたアルバム(原題は「How Dare You」 )。
私の目は点になり、頭の中は混乱した。
どうにもふざけたタイトルのように感じてしまい、私の中のイメージと合わない。
合わなさすぎて焦る。

10cc って一体どんなバンドなんだ!?(邦題って罪作り)。

謎を深めつつ物色を続ける。
「The Original Soundtrack」というアルバムはタイトルを見て、何の映画のサントラ?と一瞬考えたものの、なんかよくわからないし関係なさげと判断してスルー。
しかし、帯や収録曲さえもチェックしなかったんだな、自分。
お目当ての「I’m Not In Love 」はこのアルバムに入っているのに。
あとは「10cc Greatest Hits 1972ー1978」というベストアルバムと、もう1、2枚ぐらいあったと思うのだが思い出せない。

分類すると、

*LP

・「The Original Soundtrack 」
・「びっくり電話」
・ 何だったか忘れたアルバム

*CD

・「10cc Greatest Hits 1972ー1978」
・ 何だったか忘れたアルバム


......と、こんなかんじだったと思う。

さて、このラインナップの中から何を借りればいいんだ?
私は迷いに迷った。
だいたい、私のような情報量の少ない者は手っ取り早くベストアルバムを選んでおけばよい。
だがその頃、その手段を選択するのは邪道で、スタジオアルバムを1枚1枚ていねいに聴いていくことこそがストロングスタイルと信じて疑わなかったため、答えはNoである。
といって他を選ぶ勇気もない。
額に脂汗まで滲んできた。

どうしよう。選べない──あ、もしかして今、誰かが何枚も借りていて、それで置いてあるのが少ないだけなのかもしれない──

とうとうその日は何も借りず帰宅。
後日、改めて出直すも状況は変わらず......残念ながら元々の品揃えは少なかったようだ。

私は不要な回り道をして結局、己の信条をぐいっと曲げてベスト盤のCDを借りた。
これには「I’m Not In Love 」も「芸術こそ我が命」も入っていたし(最初から借りとけよ〜、と今では思う)。


聴きながら、1曲ずつの短い簡単な感想を書いた。
以下、当時の文より。


1989年6月8日(木)
10cc (アルバム「10cc グレイテストヒッツ 1972ー1978」のこと)

曲別の感想

1. RUBBER BULLETS

 なんか10cc のイメージとちゃうなあ 1曲目は ふーん(悪い意味のふーんではないが)

2. DONNA

 こわい!誰が歌ってるの、最初のとこ......あの高い声の...... まったく、バカにしてますね〜 ハッハッハッ おもしろくってよろしい!

3. SILLY LOVE

 うそ......ロックじゃないか...... う〜ん、最初らへんの時やからかな 美しくはないが悪くもない

4. THE DEAN AND I

 なかなかほのぼのしてるやんか? 軽いかんじがよいなあ でもどことなくコミカル

5. LIFE IS A MINESTRONE

 ふざけてるみたいな曲 妙なかんじで 明るいのがよい 

6. THE WALL STREET SHUFFLE

 お? これはちょっとだけ美しいかな ちがうイメージだが かなりくるものがある いい曲 うんうん

7. ART FOR ARTS SAKE

 これは前にラジオから録って知ってるし好きな曲*1初めはえっ!?と思ったけど でもわりと美しい カチッとしてたりしてなかったりで 心地よい

8. I’M MANDY, FLY ME

 こ、これなのだ......私のイメージにある10cc とは この美しさなのだ 聴いてて思わずうっとりとでもしてしまいそうな そんなサウンドなのだ なんとなく ホッ

9. GOOD MORNING JUDGE

 わあ、なんか70年代よ!?(あたりまえか、これは1976年にレコーディングされている) いい曲だと思う でもやっぱりこれ...... ほんまに70年代!

10. THE THINGS WE DO FOR LOVE

 出だしからもう、良いと思った いいですね〜 軽いようでも哀愁が漂ってるところが フフフ......

11. DREADLOCK HOLIDAY

 エリック・スチュワート*2の声がとてもはっきりと聴こえてくるのがよい(全体の声も) なんとなくユニークなかんじがする曲 あの......ちょっとスパニッシュ、*3なの?

12. I’M NOT IN LOVE

 この曲こそ、私が10cc を知った初めての曲 これを聴くといやでもウットリとしてしまう......のが当然でしょう!? 最初っからこの曲には感動してしまったのですから だからこういうのが10cc なのか、と コーラスとかいいかんじで、ヴォーカルも優しい声で歌ってるし、とにかく音がフワッ......としてて大変気持ちよかったんですね で、初めて聴く前に、ラジオのCMかなんかで流れてたのを聴いたことあったから、「あれ、この曲聴いたことある」ってかんじだったなあ グループ名とかは知らんかって、実質的に初めて聴いたときに、知ったんやけど とりあえず1番好きな曲


──今、こうして読み返してみると執拗に10cc に美しさを求めていて我ながら呆れる。
とはいえ、未だにそれは私の根底にあるのだが。

そして、このベスト盤を聴いてみただけでも一筋縄にはいかない個々の楽曲に簡単には屈したくない気持ち、というのもあり。
自分の中で一生懸命曲を受け入れ、納得しようとしていたことがこの当時の感想に「この曲は好きじゃない」とか書いていないことに表れている(負け惜しみ?)。

では、本当のところはどうだったのか?

白状すると、「Rubber Bullets」はわちゃわちゃとした明るい曲調に「え!?借りるの間違えた?」と不安になり、「Donna」で完全にフリーズ。
何?オールディーズ?というか、誰?

「やっぱりこれ10ccじゃない!」

途中で再生を止め、CDの盤面を確認してもなかなか信じられなかったほど。
そんな状態で聴く謎のファルセットボイスには戦慄さえ覚え、より一層不安な気持ちに。
「Silly Love」はリフやソロなどまさにハードロックで、ギターがかっこいいけどイメージ的にはますます「??」、「The Dean And I」や「Life Is A Minestrone」も含め、怒涛の振り幅で実のところついて行けてもいなかった。

そして、いろんな声が聴こえすぎて一体誰がどれなのか、何人が歌っているのか、もう「?」だらけだったのである。

そうそう、このアルバムの解説のところでやっとメンバーの名前を知った。
でもフルネームを覚えたのは一番関心のあったボーカルの人だけ。

「エリック・スチュワート。なんかものすごく普通の名前だな〜」

......失礼な感想(ごめんねエリック)。

で、このときだったか別の何かだったか、10cc というバンド名の由来(男性4人の1回分の精液の合計=10cc )を読んで思いっきり引いてしまった、ということもよく覚えている。

私は10cc というバンドに知的なイメージを持っていてこのバンド名も好きだったので、そんな俗っぽい、いかにもな由来だったなんて、と幻滅した。
そして同時に、10cc に関する詳細なあれこれについての興味もサーッと引いてしまった。
だからかどうか、解説の中にあったであろうバイオグラフィー的なことを読んだ記憶がない。


と、なんだかんだ言いつつもカセットテープに録音したこのベストアルバム。
以来、愛聴することとなる。
出来るだけ曲を飛ばさず通しで聴くように心がけてはいたが、だんだん「Donna」とか飛ばすように。

まあ、仕方ない(!)。

で、特に好んで聴いていたのは「I’m Not In Love」はもちろん、「The Wall Street Shuffle」、「I’m Mandy,Fly Me」、「The Things We Do For Love 」など、後半に収められている曲に集中。

なんでも、「10cc あるある」として「I’m Not In Love 」で10cc を好きになった者はケヴィン・ゴドレイ、ロル・クレーム組の曲に拒絶反応起こしがち、というのがあるようで(私などまんまとそのパターン)。

実験精神旺盛、毒気担当、ゴドレイ・クレーム組。
どこまでも美しい旋律を紡ぎ出す正統派メロディーメイカー、エリック・スチュワート、グレアム・グールドマン組。
ファンの好みはどちらかに分かれがち、というのも。

そして当時の私はなかなか見事にわかりやすく、スチュワート&グールドマン派だったのである。

*1:こちらに収録されているのはまさかのショートカット・バージョンで、コケそうになった

*2:私の思い込みによる間違い。歌っているのはグレアム・グールドマン

*3:当時、カリブ系の曲調のことをスパニッシュというんだと勘違いしていた